幕末!浮世絵ライバル物語
江戸末期、最も有名な歌川派の歌川国貞(三代豊国)と国芳の物語
国貞 1786年~1864年 国芳 1797年~1861年
江戸末期に同じ歌川豊国(初代)門下で2大流派を築いた、国貞と国芳。国貞は華麗な役者絵や
魅力的な女性を描き、早くから頭角を現し人気浮世絵師となった。師匠の豊国亡き後は名実ともに後
継者となり歌川一門を率いた。豊国の二代目は豊重が襲名していたがさだかな活動の記録もなく、理
由は不明ですが国貞が二代目を襲名しました。現代では便宜上、襲名後の国貞は三代豊国と呼ば
れています。
上の浮世絵は国貞時代に興行主か関係者に注文を受け作成したと思われる、浅草寺の奥山であっ
た出し物の籠細工を一覧にまとめた浮世絵です。この当時は籠で作った巨大な関羽像が評判になり
籠細工の見物で大賑わいでした。
実際は籠で出来ている関羽と周倉・・バックは籠目模様で籠細工を暗示している。
国芳は近年奇想の浮世絵師として大人気で、国芳単体で展覧会が開かれます。国貞は逆に現代人
には現役中のようには人気はなく、国芳に逆転されています。国芳の弟子筋にも後世に有名な絵師
が多く、おもちゃ絵の芳藤、錦絵新聞の芳幾、無残絵の芳年、芳艶、芳員、芳虎。更には河鍋暁
斎が子供の頃に入門したが、2年程で親に国芳一門の素行が悪いと心配されて一門から離れる。
長らく国貞の影で芽の出なかった国芳はついに「通俗水滸伝豪傑百八人之一人」シリーズで水滸
伝ブームに乗り突如として大人気絵師となり有名になります。
この三枚の水滸伝シリーズの作品は、ネットオークションで1枚2万円程で落札しました。シリーズの
中では人気がない作品で登場人物の人気も108人の中では中ぐらいかその下くらいです。
ですが・・有名で人気上位の作品は展覧会や美術本で見る事が多いですが、逆に人気のない作品
は見る機会も少なく国芳の人気作品を追い求めるより、自分だけの気に入った作品を探すほうが
経済的にも良いかと思います。
国芳の浅草寺の開帳の図ですがこれも、他で見た事の無い作品です。おそらくは開帳に集った
人々は当時の役者の似顔でさりげなく配置しているのではないでしょうか・・。
このように国芳は猫の絵、武者絵、戯画ばかりが現代人に人気を集め、それ以外の膨大な作品は
好事家が蒐集するくらいで、美術展や美術本では取り扱いされません。北斎や歌麿は市場に出れば
かなりの高額ですが、国貞や国芳は市場に膨大な数が現存している為に、特に人気がない作品は
殆ど安値で購入できます。一度東京の神田や京都の門前仲町の浮世絵専門店に行けば2万位から
購入できます。
妙でんす十六利勘、迷いは損者 歌川国芳
教訓めいた文章が書かれ迷いを戒める・・ただの美人画ではありません、この時代は浮世絵にも
規制、検閲が入り、なかなか自由には書けない中で絵師は工夫を凝らしました。
浮世絵は江戸の風俗や風習、ファッションをビジュアルで残し、貴重な歴史資料としても大変な
価値があります。江戸幕府がまだ勢力を保っていた時代ですから、政治に関する事や徳川家に関す
る事は特に規制が激しく罰則も厳しく取り締まりされました。
徳川以前の南北朝時代の楠正成、この時代を描くのはOKでした、ただし昔の一場面に見立てて
徳川幕府を批判したとされる作品も国芳は残しています。国貞はキレイな絵でデザイン性も抜群、役
者の似顔もうまく当時の浮世絵の購買層からは人気があったでしょう。ただ今日では役者絵はそれほ
どの人気がないのも、役者そのものが生きていて人気があってこその役者絵でいくら似ていても現代
では価値は低い。それに比べると武者絵は現代でも歴史好きは多いし、動物の絵、戯画は普遍的に
人気があり国貞より国芳のほうが人気が高い原因ではないでしょうか。
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